お客様の中でどなたかお医者様ごっこのお医者様はいらっしゃいませんか?

ユルめのやつ(タイトルは不定期に変わります)

形式美

形式美とは。

 

<三省堂 大辞林より>

 

今朝の出来事。コンビニでいつものお兄ちゃん(と言ってもヘタするとボクより年上)にレジを打ってもらう。いつもいつも商品を袋に収めるその所作から生み出される形式美にボクはボンヤリとさせられてしまう。

「ポイントカードは御座いますか?」「はい」

その言葉にいつものように反応しポイントカードを彼に手渡す。カードのバーコードスキャンをし、それを丁寧に両手でボクに返すと件の所作が始まる。袋は適切なサイズが選択され丁寧に底が四角に広げられる。速くも遅くもなく、でも重さも大きさも計算された配置で商品は「そっと」置かれ、配置が終わると袋は両手でスっと引き上げられ持ち手を軽く捻られつつ袋はこちら側にやはり「そっと」押し出される。コンビニのいちバイトであろう彼の所作が生み出す形式美は、「プロフェッショナルな仕事を見せて頂ける」と言う付加価値も少なくともボクには与えている。

 

ボクは電子ファイルでのドキュメントを書くのが苦手だ。内容そのものはおかげ様で業界が長い分だけ苦痛にはならない。そうでなく、体裁を整えるのが苦痛で仕方ない。でも中には体裁を整えるのが上手な人もいて「あれ?『できるエクセル』買っちゃった?そうでしょ?できちゃってるなー、あーすげーできちゃってるなー」って思わざるを得ない勢いで体裁を整えるのが得意な人もいる。そういう人達の大部分の特徴はこうだ。「体裁を整える事だけがすごい上手で仕事の中身そのものは残念ながら良くわかってない」みたいなそんなイメージ。なので体裁に関する事だけは、すっごい五月蝿い。指摘する時間があるぐらいなら「もうお前がさっさと直せよ」と言ってしまいたい勢いで邪悪な魂がマーライオンしちゃうぐらい五月蝿い。

 

我々(所謂IT屋)みたいな家業の人間は仕組みだったり機能だったり「見えないものをお客様に見えないところで作ってる」ので所作を人に見せる機会はほとんどない。望み通りに動いてトラブルがただの一度も発生しない(なんてモノはこの世の中に存在しないが)ようなモノを納品して稼働してくれれば、お客様にはそれこそに最低限の満足を得て頂けると思う。それを使って頂く事で結果的にでも売上が上がるだとか、お客様が持つ顧客の満足度が上がる…みたいな結果が出れば、我々としても良い仕事ができたと自覚できる。つまり基本的には結果だけが全てだと言う捉え方をボクはしている。もちろんトラブルは必ず発生するので、トラブルへの対処を含めた総合的な結果を出すと言う意味で。

 

が。そこに我々はエンジニアとしての、もしくは職人としてのこだわりを「形式美」として提供する事も大切な事ではないのか、と少し思いしらされた。形式美とは相手にとって直感的に美しいと感じる要素をもった所作であり、我々こそはその形式美をもって感情に訴える仕事をすべきではないかと、冒頭のコンビニの兄ちゃんが生み出す形式美によるボンヤリ空間にて、ほんのりボクに訴えてきたのである。

 

ボクらが伝えられる形式美ってのは何なのか。それはドキュメントの体裁かもしれないし、もしかしたらデジタルガジェットを触る所作なのかもしれないし、単純に出来上がったシステムのUIなのかもしれない。でもそれらは何か違う気がする。今のところ分からない。分からないけども、職人的に意識的に追求していく必要があるのでは…と頭をもたげている。